2013年『偽造/夏目漱石』

『偽造/夏目漱石』 第20回BeSeTo演劇祭BeSeTo+参加作品

2014年11月4日(月)〜11月10日(日)@アトリエ春風舎

 

原作:夏目 漱石『三四郎』ほか
戯曲:市川 タロ(劇作家・『デ』代表)
構成・演出:鹿島 将介
出演:瀧腰 教寛 立本 夏山 平井 光子 邸木 夕佳

舞台美術:深代 満久
衣裳:富永 美夏
演出助手:永井 彩子
照明:安藤 直美
宣伝美術:青木 祐輔
ドラマトウルグ:佐々木 琢
制作:本多 萌恵

主催:重力/Note
共催:第20回BeSeTo演劇祭実行委員会
提携:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
後援:新宿区
協力:夏山オフィス アトリエ春風舎
助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)

 

【 公演日程 】

11月4日(月)  19:30
11月5日(火)  19:30★
11月6日(水)  15:00★
11月7日(木)  19:30★
11月8日(金)  15:00 /19:30★
11月9日(土)  13:00/17:00
11月10日(日) 15:00

※★の回は終演後にポストトークあり。5日は市川タロさん( 劇作家/ユニット・デ代表)、6日は佐々木琢さん(劇作家・演出家/王子小劇場プロジェクトディレクター)、7日は川口智子さん(演出家・劇作家/座・高円寺 企画・制作スタッフ)、8日は広田淳一さん(劇作家・演出家/アマヤドリ主宰)をお招きします。

※上演時間 75分(予定)
※英語案内付き
※受付開始は開演の30分前、開場は15分前を予定しております

※未就学児童はご入場いただけません。


 

カブトと《平凡》の居心地

もう随分前になってしまったけれど、お札の肖像にあわせてカブトに折り紙するのが流行っていたことがあった。稽古場でも、流行に付き合いのいい女優が器用な手つきでテキパキと折りたたみ、あっという間にカブト姿の漱石を作ってくれたのだが、どこかキョトンとした眼差しのその姿は、背広やネクタイとのアンバランスさとあいまって、いかにも居心地の悪そうな感じだった。それでいながら、妙に納得するものがあったのを覚えている。

書き記した言葉に触れてもらうことを本分とするのが作家だとすると、漱石と私たちのあいだには、他の作家たちとは大きく事情が異なるものがあるように思う。日本で生きていくなかで、「必ず読む機会を用意されている作家」という意味では、長らく国語の授業の中で取りあげられてきた漱石は、誰もが一度は読む作家だった。また日常生活において、最も取引される銀行券の肖像としても強い印象を残しているということからも、私たちが毎日顔をつきあわせてきた作家と言ってもいいのかもしれない。

寺山修司が噂話によって実像が拡散していった作家だとすると、漱石は教育や通貨といったシステムによって実像が空洞化されてきた作家じゃないだろうか。フェルナンド・ペソアも母国ポルトガルで同じ憂目にあっているが、作家にとっての死後の栄光というものには、マスコット化されて愛でられる一方、その精神が宿っている言葉それ自体からは人々が遠ざかっていくという皮肉が伴われるらしい。ここには《国家》と《個人》、それらを仲介している《社会》との結びつきをめぐる皮肉なドラマがある。

それにしても私たちは、一体何を漱石という存在に依託してきたのだろうか。最近では教科書から外れることもあるようで、漱石が千円札であった記憶も次第に遠のいてきた。近代以降の日本人が、常に漱石の言葉を傍らに置き続けた意味について、そろそろ考えてみたいと思っている。《平凡》と感じるくらいの距離感にあるものほど、最も根深い問いを抱え込んでいるはず。出る杭を打ってきた日本においては、尚更。

鹿島 将介

 

 

■ 夏目漱石 Souseki Natsume 1867〜1916 ■

日本の小説家・評論家・英文学者。江戸・牛込馬場下横町出身。本名は金之助、俳号を愚陀仏とした。名主として知られた夏目家に生まれるもすぐに里子に出され、姉に連れ戻されたものの塩原家に養子に出される。養父母の離婚により9歳から夏目家で育つことになるが、復籍したのは21歳だった。帝国大学英文科を卒業後、松山や熊本での教員生活を経て33歳の時にイギリスへ官費留学。しばらくして神経衰弱になるとともに下宿を転々とし、「漱石発狂か」と噂されるなか帰国。小泉八雲の後任として東京帝大で教鞭を取るも不評。同時期に勤めた第一高等学校では、漱石に叱責を受けた数日後に華厳の滝で自殺する生徒がいたりと、再び神経衰弱に陥る。高浜虚子の勧めで精神の治療がてら『吾輩は猫である』を執筆。続く作品群も好評を得たことで一躍人気作家へ。1907年には教授職を断って朝日新聞社専属の作家になった。「修善寺の大患」以降は、死を意識するようになる。一方で多くの門下生を世話し、彼らを意識して書かれた作品も多い。活動期間は約10年間、日本語が近代化されていくプロセスを体現した。代表作に『坊っちゃん』『三四郎』『こゝろ』、絶筆に『明暗』など。旧千円札に肖像があったのは記憶に新しい。

 


【ポストトークゲスト紹介】

川口智子:演出家・劇作家/座・高円寺 企画・制作スタッフ

佐藤信の個人劇団「鴎座」で活動。ベケット作品の新訳上演や、サラ・ケイン『Cleansed』の連続上演「クレンズドプロジェクト」を企画・演出。多様なジャンルのアーティストとの長期的なワークショップによる作品づくりが特徴。2013年12月には、ケインの幻の作品を題材に新作 『Viva Death』を上演。

 

 

広田 淳一:劇作家・演出家/アマヤドリ主宰

2001年、東京大学在学中に「ひょっとこ乱舞」を旗揚げ、主宰する。以降、全作品で脚本・演出を担当し、しばしば出演。さりげない日常会話ときらびやかな詩的言語を縦横に駆使し、身体性を絡めた表現を展開。随所にクラッピングや群舞など音楽・ダンス的な要素も節操なく取り入れ、リズムとスピード、熱量と脱力が交錯する「喋りの芸」としての舞台を志向している。簡素な舞台装置と身体的躍動感を中心に据えた必須としながらも、あくまでも相互作用のあるダイアローグにこだわりを見せる。(『ひょっとこ乱舞』は2012年から『アマヤドリ』として活動しています。)

 

 

市川タロ:劇作家/ユニット・デ代表

1989年生。東京出身、京都在住。劇作家、演出家。2011年、ゲッケン・オルタナ・アート・セレクションへの選出を契機に、自身のユニット・デを立ち上げ、劇場に限らず野外、ギャラリーなどでの作品を発表。作品に、6時間のインスタレーション作品『ルーペ/側面的思考法の発見』(Gellary Near)、北園克衛の詩を用いた移動演劇『きれいなハアト型』(京都市立芸術大学学内)、安部公房『S・カルマ氏の犯罪』をモチーフにした会話劇『名づけえぬもの』(STスポット横浜)など。

 


佐々木琢:劇作家・演出家/王子小劇場プロジェクトディレクター

座・高円寺劇場創造アカデミー舞台演出コース修了(1期生)。演出家 川口智子がサラ・ケイン『Cleansed』を連続上演する「クレンズドプロジェクト」、重力/Note『雲。家。』などで演出助手を経験。盛岡で行われた「名作を読もう!『走れメロス』」では脚本を佐藤信と共同で担当した。2012年8月に初の作・演出作品『口をあけて寝ている』を上演。


【舞台写真】

© 青木 祐輔